壊した女
部内の全体会議でのこと。
副社長就任が決まって感極まった本部長が、
「会社と私の歩み」なるものを話し始めた。
ま、いい。
トップのイヌのように尽くしてきた彼だ。
朝晩、黙って出社し、黙って帰社しても、
役員には直立不動で大きな声で挨拶するような男だ。
その役員が副社長まで引っ張ってくれてよかったね。
感極まって話したくなる気持ちもわかる。
ここは温かく聞いてやろう・・・
-と思っていたのだが、
「5年前、うちの人事制度は崩壊してました。
それを僕が立て直したんです」
は?
崩壊してた?
僕が立て直した?
5年前に私に向けられた言葉を、
誰のせいとは言わなかったものの、
また持ち出すか?
それは聞き捨てならないですぜ。
確かに崩壊といえば崩壊してた。
ただ、人事制度を立ち上げた私からしてみれば想定の範囲内のこと。
だから、
「この人事制度は3年持たない」と、最初から私は言っていた。
なぜなら、当初はお友達集団だったから。
お友達集団から、企業集団へ移行し、
会社が急成長していく過程では、絶対壁にぶち当たることは予想してた。
何も作っておしまい、とは思ってないよ。
人は生き物だから、人事制度だって生き物、というのが私の持論。
崩壊ではなく、脱皮の時期だと言って欲しい。
人事経験者ならそれくらいわかりますぜ、旦那
人間って、不満を誰かのせいにしたいもの。
その矢面に立てられたんだな、私。
目立つ存在って損だ。
5年前の悪夢が蘇ってきた。
本当に夢見が悪くなりそう。
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